2016年に中学2年の藤井少年がプロ棋士デビューしてから八冠制覇するまでの7年間で、藤井ファンはもとより将棋ファンも一気に増えました。その将棋ファンの増加に一役買っているのが、対局中に表示される
人工知能(AI)による形勢判断です。将棋に詳しくない人も
AIの表示を見て、どちらが優勢なのかや今の一手で形勢が逆転したなどの情報がわかり、将棋との距離が縮まりました。そして今やほとんどの棋士が
AIを導入して将棋の研究をするようになりました。

今のような
AIがまだ夢の夢だった昭和30年代のヒーローといえば
鉄人28号と
鉄腕アトムです。ただ、この2体の最強ロボットには体の大きさや馬力以外に、
根本的に大きな違いがあります。
鉄人28号は金田正太郎少年がリモコンで操作しています。ですからリモコンを悪者に奪われると正義の味方から悪の手下になってしまいます。
鉄人28号は
自分の意思で判断できません。操縦者の意思に忠実です。

それに対して
鉄腕アトムは人間に操作されるのでなく、
自分の意思で行動します。善悪を自分で判断して悪者と戦います。

つまり両者の決定的な違いは
自分の意思で行動するかしないかということです。
あれから60年、
鉄人28号のようなロボットはすでに産業ロボットという形で実用化され、日々進化して各分野で活躍しています。そして、現在の科学技術では作れないと言われていた
鉄腕アトムも少しずつ実現化されつつあります。最初に書いた
将棋AIも、自分で形勢判断し、「最善手」や「悪手」を判断していて、
鉄腕アトムに近いと言えるのかもしれません。

しかし
鉄腕アトムにあって
AIにないのが「
感情」です。
鉄腕アトムは正義を愛し、悪を憎みますが、
AIには「感情」はありません。ただ、AIが感情を持つと、それはある意味大変なことになるかもしれません。
私が中学生の頃に読んだ
星新一の短編小説に
「神」を作ろうとした男の話がありました。男は世界中で信仰されている様々な「神」の情報を次々とコンピュータに入力していきます。するとコンピュータが徐々に神々しく輝き始め、やがて大音響とともに空に浮かび消えてしまいました。そのあと神を冒涜する発言をした人物に突然雷が落ちました。
男はそれまで神話の中の存在だった「神」を、あろうことか現実の世界に存在させてしまった…という話です。50年も前の小説ですが、今のAIを予測して開発に警鐘を鳴らしていると思えるような内容です。

過酷な環境で休まずに長時間働ける「
鉄人28号」は
人間の助けになりますが、感情を持った「
鉄腕アトム」は
人間の敵になる恐れがあります。問題はその中間的存在の「
人工知能(AI)」です。AIの進歩・普及は世の中が便利になる反面、使い方によって
人間の意欲や能力を衰えさせる面もあるような気がします。しかし知らないうちにどんどん生活の中に入り込んできます。
さすがに
鉄腕アトムも「
少し急ぎすぎていませんか~」と叫んでいるのではないでしょうか。
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